キコレンジャーレッドの子どもでもわかる森林社会学講座③ ー包括的な富と日本の森林②ー
包括的な富と日本の森林②
キコレンジャーレッドです。前回は、森林も含め自然環境は資産としての意味を持つという話をしました。
そう考えた時、日本の森林にはちょっと面白い特徴があるんです。
国土と森林
日本は国土の約6割が森林です。そのうちの4割が人工林。つまり、日本全体の2~3割くらいが植林された森ということですね。
国土を占める3割くらいの自然林と2~3割くらいの人工林と1割くらいのその他の森林が日本の自然環境を形作っています。
森林は空気をきれいにしたり、水をきれいにしたり、山が崩れるのを防いだり、川に栄養を運んで海を豊かにしたりしています。
緑の国日本。素晴らしい!
でも、そのうちの2~3割を占める人工林が危機に瀕しています。
人工林の危機とは
戦後復興の木材需要を受けて、各地で植林が進みました。1950年代からです。
その後、輸入材の低価格化、木材需要の低迷、日本経済の景気後退などがあって、植林した木を売ろうにも採算が合わなくなってきました。
林業家は国土の2~3割を占める人工林を手入れすることができません。
だって、手入れすればするほど費用が嵩んで赤字なのですから。
別の仕事見つけなければやっていけませんよね。
日本に木材が無くなるじゃないか!
と思うなかれ。
安い輸入材で補えてしまうのです。
そして残された人工林。
木材を生産するためには、ぎゅうぎゅうに苗を植えて真っ直ぐに伸ばしながら、間伐という間引きをして、太くて真っ直ぐな木を育てていきます。
これをしないでいると...
森は細い木が密集した状態になり、葉で空が塞がれ、暗くなった地面の下草が消え、雨が地面を削り、土地が痩せ、木が倒れ、台風が来て土石流が...
なんてことが起こり得ます。
山が水を保持出来なくなると、雨の度に河川が急激に増水して下流域に氾濫を起こします。
泥となって川を流れる山の土は、海に届いて海洋資源に悪影響を与えます。
何百年か放っておけば生態系の力で自然林のような状態に戻るのでしょうけど、その間何が起こるのか...怖くありませんか?
人間が手を加えた自然環境は人間が手を加え続けなければ維持できないのです。
森林破壊と割り箸
そういえば、一時期、my箸キャンペーンってありましたね。
「木を乱伐濫伐すると森林破壊を招くから、割り箸を使うのをやめよう」って。
「あれ?」と思った方はいますか?
私ならこう言います。
「木を使うことで人工林は守られるから、国産の割り箸はどんどん使おう」
自然林を伐採して割り箸を作るのなら話は違ってきますが、日本の割り箸は、木材生産のために作られた森から作られます。
しかも、間伐材や材木にならなかった丸太の端の部分に付加価値をもたせられるわけです。
最初に木を使って家を建てると木が減ってしまうという話をしました。
この時減るのは、木材にするために育てた木です。
つまり、売れるということ。
たくさん売れて黒字になっていけば、もっと人工林を整備して、もっと付加価値が高くなるように木を育てていけますね。
光が差し込み、風が抜けるような健全に木が育つ森と言うのは、人間にとっても動物にとっても快適な環境です。
ということは、木を使えば使うほど国土の30%を占める人工林は、豊かになっていくということなんです。
ただ、国産材に限っての話です。
消費することで増える?
社会経済にとって自然環境は資産の一つである。
それを消費することで、GDPは増加するが、資産は減っていく。
ところが、日本の森林は、木を消費することが資産を増やすことになる。
日本人の森林との関わりは昔からサステナブルだったんです。
面白いと思いませんか?
次回は「里山」についてです。